近頃、豪華観光寝台列車が登場して話題ですが、
もうひとつ話題の“動かない”寝台列車をご存知ですか?
「想像以上に北斗星」そんな噂を耳にし、テーマある物件を見学して来ました。

02 幸せ感じる、リノベーション建物を見学する

トレインホステル北斗星(東京都中央区)
取材協力/R・Project

ビルの2階から5階は2段ベッドが並ぶ寝台客室。その客室の再現度の高さからリピーターも多く、旅慣れた人の間では車両の「匂い」も当時のままと評判だそうです。憧れの夜汽車の「旅」に浸る舞台は完璧です

車両から建物へ、蘇った寝台列車

 東京・馬喰町ビルにある「トレインホステル北斗星」は、一昨年まで上野と札幌を結んでいた寝台列車をテーマにした宿泊施設で、昨年12月に誕生しました。今風に言えばゲストハウス。リーズナブルな価格と旅人同士が情報交換できる“旅の拠点”としての魅力から最近、全国的に増加している旅行者のための宿です。今回「人と地方を繋ぐ」をコンセプトにリノベートされた、話題の「トレインホステル北斗星」を訪ね、そのディテールと誕生に至る経緯をR・Project マネージャーの野村友莉子さんに伺って来ました。
 客室に一歩入れば、正真正銘、寝台車の世界。本当に旅しているような気分になります。 ここでモチーフとなった車両は、ほとんどが昭和製のオールドタイマー。ゆえに電源プラグ設置や体格に合わせたサイズ感などの調整は、特に気を使ったそうです。「寝台が広過ぎれば雰囲気が損われます。だからといって実寸では狭くて荷物が置けず、ダンボールで原寸模型を作って検証したんです。北斗星のベッド幅は70㌢、その奥に+10㌢のゆとり空間を設けました。ベッドとベッドの間隔は大きな荷物を置いても、ゲスト同士がストレスなく交流できる距離感に。これでダメなら…ビジネスホテルをお勧めしたいです(笑)」ただ復刻するだけではなく、試行錯誤を繰り替えして現代版の寝台客室は作られています。

「北斗星」に使われた客車の廃車解体前に持ってくることができる部品は、すべて工場から持って来た情熱は素晴らしく、寝台や照明、手すり表示案内板、スイッチ類に至る細部まで本物に触れることができます。

受付は1階に(取材当時)。2階にはラウンジがあって、元々はフランス料理も供された食堂車「グランシャリオ」がモチーフ。椅子やテーブルランプ、天井に埋め込まれた半球状の照明など臨場感溢れる室内は、宿泊客の為の多目的空間です

運行当時の「北斗星」車内を再現した室内

現役時代のスシ24 507食堂車「グランシャリオ」。フルコースのフランス料理のほか、優雅な朝食を提供する食堂車として人気がありました。現在はA個室(ロイヤル)は数室しかない貴重な部屋。シャワーやトイレ、洗面台が付いた豪華な部屋です現役時代の二段式ベッドが並ぶB寝台がうまく再現されて、居ながらにして夜汽車の風情を体感することができます

トレインホステル誕生は、その建物構造から

 R・Projectは、古いものや使われなくなったものを宿泊施設として再生し、運営する会社。その実績から、この施設の運営を任されたといいます。「ビルのオーナーであるJR東日本都市開発様はゲストハウスを旅の情報発信地として運営し、地方に外国人観光客を誘致することを考えられていました。同時にパートナーも探されていて、運営実績のある私たちに声がかかりました。…ただ、建物の改修においては古いオフィスビルということで、ビルの構造に関わる問題をクリアしなければなりませんでした。特に窓のない壁面やコンクリート柱の存在は、開放的な空間をつくることを難しくしました。」 それら、ゲストハウスへの改修を取り巻く問題を解決したキーワードが「寝台列車」でした。当時(2015年8月頃)は、ちょうど列車の廃止が話題になった頃。「北斗星は惜しまれつつ引退し、ファンも多い特別な列車。使われなくなるものを再生するという事は、私たちの考え方そのものですし、JRグループ会社様と共同企画ということで、何か鉄道を絡めたい思いはずっとあったんです。ですから、寝台列車という提案はごく自然に受け入れてもらえました。」

館内サインは実際の部品をはじめ、凝ったデザインで雰囲気十分です
食堂車の照明はそのままラウンジに。テーブルや椅子と共に当時の姿を再現しています
面白いのは、館内の壁に付けられた折りたたみの椅子。これも実際に使われていたもの
R・Projectの野村さん。交流を広げる空間づくりを日々、考案されています
一部のベッドは、プラス10センチで寝台車特有の籠もり感とゆとりを両立させました
ラウンジカウンターにある思い出ノートブック。記念に何か書いてみましょう!

「寝台列車ホステル」は、人と場所を結ぶ旅の拠り所

 話題となった2016年12月の開業から、全国からやってくる旅人の憩いの場となった、ゲストハウス「トレインホステル北斗星」では、ホステルの魅力をさらに向上させるためのアイデアが生まれています。「建物の壁に車窓が欲しいとよく言われますが、そこは我々らしく交流を育む場所にしようという結論になりました。そこで、壁にお客様の「北斗星」の写真や絵を飾って、より交流が生まれる空間づくりを考えています。」フロント機能をラウンジへ移す案も浮上して、「豊かなおもてなし」のためのリノベーションはこれからも続いています。
 訪ねてみて気付いたのは、「リアル世代のオールドファンが多いのでは...」という予想に反し、若いゲストも少なくないこと。印象に残った関西から来たという学生さん。「いつか乗ってみたかったんですが、乗れなくて、それで来たんです…」と、ここでの宿泊を満喫されていました。
 懐かしい匂いのする「トレインホステル北斗星」。列車は引退してもビルのリノベーションをきっかけに生まれ変わった新しい「旅の発信」の場として、幅広い世代の旅行者に愛されています。(了)

[ 取材協力・写真・資料提供 ]
トレインホステル北斗星
〒103-0002
東京都中央区日本橋馬喰町1-10-12
Tel.03-6661-1068
http://trainhostelhokutosei.com

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  • 01 白井組を支える技と職人たち
  • 03 時代を超えて存在する唯一無二のテーブル
  • 04 夢中な人に会う旅